いわゆる盗用疑惑です。
つまり日本人デザイナーがそのロゴを「盗用」したのではないか、という紛争が勃発したのです。
仕掛けたのは同劇場のロゴデザインを担当したベルギーのオリビエ・ドビ氏、受けて立つのは日本人佐野研二郎氏と日本の五輪組織委員会。
佐野氏はその「主張」を否定、7月28日には大会組織委員会の事務総長とロゴ選定の審査委員代表が打ち揃って記者会見を開き、疑惑を否定しました。
しかし、その後、オリビエ・ドビ氏のリエージュ劇場のロゴと日本人デザイナーの公式エンブレムと並べて見ると、似ているとか似ていない、という「事実」については、誰でも意見を述べることが出来ますので、意見が殺到したのです。
その結果、7月31日五輪関係機関のトップが集まる調整会議の開催が8月1日午後と決められました。その日の午前、大会事務総長は、審査委員代表と佐野氏と緊急会議を開催したのです。
そこで佐野氏は原案の模倣を否定しましたが、活用例のイメージ図についてネット上の写真の無許可流用を認め、作品の取下げを申し出た。同日午後6時、大会組織委員会の事務総長は記者会見の席上、佐野氏のデザインした公式エンブレムの使用を撤回、新たなデザインを再公募すると発表したのです。
ベルギー人デザイナーの仕掛けが7月24日、それに対する反撃が7月28日、無条件降伏と言うべきロゴ使用の白紙撤回の発表が9月1日、あっという間の敗戦です。
サッカーに譬えれば、オウンゴールで負けてしまったというべきでしょうか。
今回の五輪エンブレムをめぐる闘いは、幕末・維新以後日本人は西欧列強の文物を受容して来た筈なのに、日本人は現在に至るも西洋人の思考パターンを理解していないのではないか、という日本人の、独特の一面が垣間見え興味を引くのです。
この五輪エンブレム論争で重要なのは、西洋人の思考パターンである「挙証責任」という考え方です。日本人はどうもこの挙証責任という考えが苦手のようなのです。
挙証責任とは、「事実」が黒白どちらか不明の場合に、論理的に考えなければならないのです。その事実を主張する側が、黒白どちらかに、第三者を納得させるための証拠をあげて、その事実を証明しなければならない不利益を被るという負担のことです。
その意味で、挙証責任は証明責任とも言われます。
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