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大岡裁きの好きな日本人? ~民事事件~

一人の子の母親だと名乗る女が二人、お奉行様にどちらが実の母親かを決めてくれ、という裁きが持ち込まれました。

それでは、両名の者、子供の一方の手を握れ、そして実の子供であると考えるのであれば自分の側に子を引き寄せろ、と命が下りました。
双方から手を引っ張られた子供は、その痛さに泣きだします。
それを見た片方の女が手を離してしまいます。
手を離さなかった女は勝ち誇り母親と認められたかと言うと、大岡裁判長は、子供の手を離した女を母親と認めた、すなわち、双方から手を引っ張られ痛いと泣きだした子供を見て、「可哀そうだ」と考え、手を離した女の方に軍配を上げたのです。
つまりこの判断は、必ずしも、母子の関係が論理的に決められたわけではなく、情緒的なのですね。

今と昔を比べると、幼い子に対する親の執着度が変わったのではないでしょうか。
昔は、父親と母親とが何らかの理由により別れなければならなかった場合、よっぽど母方に育てられない事情がある場合以外は、母親が引き取るのが原則でした。それが小さい子供のためになると、一般的に考えられたからでしょう。
最近は、父も母もその両親たちも、子供を自分達の持ち物として考えているのではないかと思われる事件が起きています。
一方の親が、他方の親に引き取られた子供に会いたいばかりに(?)子供を連れ去り、連れ去った親が未成年者略取罪で逮捕される事件です(例えば、日経新聞平成17年10月6日付記事)。

平成17年(2005年)12月9日には、最高裁で親権者である父親が、保育園前の路上で、妻の実家に暮らしていた2才の長男を、迎えに来た妻の母親のすきをついて、子を抱き抱えて車に乗せ、連れ去った行為が、未成年者略取罪に問われ、懲役4年執行猶予4年と判断されたことが報道されました(日経新聞同日付記事)。

何故、子供を連れ去らなければならないのか、何故、引きとった側の親は、他方の親と子を逢わそうとしないのか、大岡裁きの時代の親子関係が変って来ていると考えざるを得ません。
尚、国際結婚が破綻した夫婦間の子の取り扱いを定めたハーグ条約は、わが国も批准しましたが、この引き渡しは、原則として公道や保育園では行わず、自宅で行うこととされています。
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カテゴリ: 弁護士の交渉術

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