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第1章1-2  軍事戦略論と禅的思考

戦略とは何か?

戦略とは何か、について語る前に問題を一つ。

(問― 戦略の父とは誰か?)

これを知っている方は、かなりの戦略通だ。西欧では常識のようである。
その答えは、古代都市国家カルタゴの将軍、(ハンニバル)である。ナポレオン、クラウゼビッツ、第2次大戦時のロンメル将軍らが模範としたようだ。ハンニバル知らずは、戦略知らず、といわれるようだ。
西欧人は、日本のように、海で囲まれていないため、国境と国境を陸地で接している。
戦争に負けることが、直ちに自国の滅亡に直結してしまうので、戦争に勝つための精緻な理論を構築し、実戦で試してきた。
それが、現今の戦略論や軍事理論なのである。
日本は、戦争に負けてしまったが故に、軍事理論や戦争学等々について、勉強し研究することが得手ではない。
しかし、心ある人達は、戦争に勝つための理論を研究してきた。

弁護士は、私人間、公的団体と私人間の争い、つまり戦いに勝つために軍事戦略論を学ぶ必要がある。
以下に述べる戦略論は、奥出阜義著・ハンニバルに学ぶ戦略思考(ダイヤモンド社刊)に学んだ、「弁護士のための戦略論」である。

戦略力には、11の原則があるという。
①目的の原則
②創造の原則
③主動の原則
④集中の原則
⑤奇襲の原則
⑥機動の原則
⑦柔軟の原則
⑧統一の原則
⑨簡明の原則
⑩保全の原則
⑪経済の原則

の11、である。防衛大学でもこのように教えるらしい。
これらの原則は、並列的に重要なわけではない。奥出先生は①・②が主原則、③~⑦が軸原則、⑧~⑪を補完原則と名付ける。
これら戦略力の原則、というものは西欧列強、もっと詳しく言えばキリスト教を信ずる人々が、考え出した原則である。
キリスト教徒は、「太初にコトバありき」と聖書に書いてあるように、「コトバ」を使用して考えるのである。
つまり、論理脳を動かして行動するのである。だから、行動を分析し、コトバにして脳に命令しないと、行動に移れないのである。
しかし、日本人は、直感で生き残るための行動をし、生き残りをかける。

それは、東北大震災の際に、「現地の人たちの間に明らかだったように、『津浪てんでんこ』ということが古老から言い伝えられていたことでもあった。
すなわち、「津波てんでんこ」というのは、理屈を言わず、自分が助かるために、すぐに逃げろ、という生き残りのための行動学だったのである。

戦い(闘い、争い)に勝つためには、戦略が必要である。しかし、戦いのための戦いをしてはいけない。この「戦いの目的は何かを」をコトバにし、コトバにせずとも、必ず心に念じ、気にかけていなければいけない。これが、戦略力の第一の原則なのである。
ハンニバルの戦略力の原則からは、「目的の原則」だけを頭の中に叩きこんでおけば良い。その余の原則は記憶しなくてもよい。只、その目的を達するために、やってみて、自分で覚えるものだ。それが日本人だ。

第二原則は、創造の原則、つまり古今の事例に学び、あるいは事例のないことを考えよ、そうして闘え、ということである。
昔、我々は「理屈を言っている暇があったら、やってみろ」と言われ、わけも分からず、失敗をし、成功したりして、実務ができるようになったものである。

弁護士も戦いに強くなければならない。そのためには西洋及び東洋の戦略力の原則を学ぶ必要がある。

ハンニバルの戦略力からは、目的の原則を学ぶのである。あとは勝つために何をやったらよいか、考えるのだ。まかり間違っても、戦力の「目的の原則」を忘れ、感情的になって、無用の争いをしてはいけない。
日本人は、どうしたら戦略力を錬れるのか、については次に述べよう。
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タグ: 法律脳
カテゴリ: その他

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